研究データ
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細動脈はさらに末梢に進むにつれて枝分かれして益々細くなり、ついに血管壁には平滑筋も結合組織もなくなって一層の内皮細胞のみから成る。壁が薄くて口径の小さい血管、毛細管になる。ここでは血液と血管周辺の組織とが薄い内皮細胞のみを介して接触することになり、ここではじめて血管内外の物質の交換が起こる。
血液循環目的は血液と組織との間の物質交換によって生体の内部環境の恒常性を維持することにある。したがって毛細血管領域こそ循環系に於いて最も本質的な部分であって、心臓、動脈、静脈系は適正な血流を毛細管に供給するための補助器官と言ってよい。細動脈の末梢(終末細動脈)から毛細管に分かれ、再び集って細靜脈の末梢(終末細静脈)に至るまでの領域を微小循環という。毛細間の環境だけでなく、その前後の細動脈、細静脈とのつながりの部分をもあわせ考えたものである。
○微小循環血流
毛細血管床とその輸入、輸出血管である細動脈、細靜脈を一括して微小血管系と呼ぶ。狭義の微小循還とは微小血管系内の血液の流れを意味する。しかし現在一般に用いられている微小血管系内の血流に加えて系内血液―間質液―組織細胞間の物質移動、間質液の流れとリンパ系を通じての輸送などをも包括する。血液循環の主目的が生体内部環境の維持、すなわち全身の各組織細胞に対する生活物質の供給と代謝産物の除去にあることを考えるならば、微小循環こそまさに循環系で最も本質的な役割をする部分であり、心臓や太い血管は微小循環に適切な血液を供給するための補助器官であることが理解できる。全身の細胞の生活条件は微小循環によって直接規定される。微小循環の障害は当該組織の機能不全を引き起こし、障害の部位と広さによっては生命の喪失につながる。この意味において微小循環の世界は、その名称から想像されるような」「微小」な存在どころでなく、個々の細胞からその統合体としての個体の生命維持を直接左右する「巨大なシステム」である。微小循環という名称が一般に用いられるようになったのは約20年前からである。しかしその研究の歴史は300年前にさかのぼる。1661年、M.Malpighiはカエルの肺で初めて毛細血管を発見した。
19世紀の初頭まではおおむね形態学的な観察の記述に留まっていた。A.Kroghにによって近代微小循環の基礎が築かれ生理学、薬理学、病理学、臨床医学などの各分野の研究者の関心を集めるようになった。微小循環では毛細血管壁を通じて物質の交換が行なわれるため、その動脈側と静脈側では血液の組成のみならず粘性が異なる。毛細血管網への輸入、輸出血管である細動、静脈の血流は、自己調節並びに神経性、体液性調節を受けている。
参考文献:新生理学講義(南山堂)鈴木 泰三・星 猛 編
微小循環の概念
解剖学的:細動脈、毛細血管、細静脈
生理学的:抵抗血管(細動脈)、交換血管(毛細血管)、容量血管(細静脈)及び細胞間の物質交換、毛細リンパ管の間に無数の微小な通路中の組織液の循環。毛細血管は、血液と組織細胞との間の物質交換の場として、血管系の主要機能を営んでいる。
微小循環観察機マイキュレーター(爪上皮毛細血管観察機)
○動的、連続的に微小循環を観察することが出来る。血管、血流状態を追跡でき、微小循環(毛細血管)の形態、流動状態、ループ、血管口径、血流速度を観察することができる。
微小循環について